室内の壁には、変わらぬ美しさと安らぎをさりげなく感じさせてくれるボタニカル・アートを配しました。
ボタニカル・アート=植物画は中世から近代に歴史が移行する中で、自然科学への関心が高まるにつれ、博物画の一環として生まれたものです。
ヨーロッパでは伝統的に受け継がれ、見る科学としての機能を全うし、後には絵画におけるリアリズムへの発展へとつながりました。
当初は研究者自身が図を描き、銅版画を彫り、手で彩色するというナチュラリスト・エッチャー(またはエングレーヴァー)という形をとっていましたが、後には三者の分業も行われるようになりました。
19世紀になると花や鳥をただ図鑑的に描くだけでなく、ピクチュアレスクを好むイギリスを中心に自然の背景の中に配するようになり、人々の好奇心を満たすと同時に芸術として鑑賞する対象ともなりました。
20世紀に入ってカラー印刷術と写真術が発達して以降は、この手法と芸術が急速に衰えていったのはいうまでもありませんが、今ではアートとして愛好され、後代の人々の目を楽しませています。
各客室に配されている絵は、すべて18世紀の後半から19世紀にかけてのオリジナル銅版画に手彩色したもので、イギリス・ヴィクトリア朝期のものが中心となっています。